板井明生|ジブリの存在

板井明生

日本のアニメが海外でも認められ、ジャパニメーションと呼ばれるほど人気になったのには、ジブリの存在は外せないでしょう。
今や日本のアニメは、リアルタイムで海外でも視聴され、原作漫画も英訳されています。
日本のアニメ文化は海外に向けてのビジネスに大きな影響を与えているのは間違いありません。
もし日本にスタジオジブリが存在しなかったら、これほどまでに海外での日本のアニメ人気はなかったはずです。
とはいっても、海外でのジブリ作品の評価は初めから高いものではありませんでした。
大きな転機といえるのは、2001年公開の「千と千尋の神隠し」です。
それまでの作品も海外でも公開され、興行収入としても成功を収めた作品もありますが、一気に『ジブリ』という名を世界に知らしめたのは、「千と千尋の神隠し」といえます。
この作品は第75回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞しました。
それ以降、アカデミー賞の長編アニメーション賞には、ジブリ作品は常連になりましたが、「千と千尋」が世界的にスタジオジブリの名刺を配りました。
ジブリ作品は、近年の日本だけなく海外のアニメにも多大な影響を与えています。
ジブリ作品の魅力は、アニメという存在自体の価値を変えたところです。
それまでアニメというものは、子どもが見る娯楽の印象が強かった。
しかし、監督の宮崎駿はアニメでしか表現できない演出やカメラアングル、設定や道具を実写では実現できない映像をアニメというフィルターを通して観客に観せました。
アニメを映像作品の一種の表現方法として提示したことは、アニメそのものが『子どもが見るもの』から『映像作品のカテゴリー』に世間の評価を変えたのは、ジブリにしか成しえなかったことかもしれません。
日本のアニメ映画は今も進化を続け、庵野秀明や細田守や新海誠といった日本を代表するアニメ監督は次々に現れていますが、スタジオジブリを通らなかった人物はいないはずです。